薄利多売は時代遅れ?利益を残す価格設定の考え方

薄利多売は時代遅れ?利益を残す価格設定の考え方

薄利多売が時代遅れだと言われるのは、市場が縮小しコストが上がり続けるなかで、値下げの原資を確保できなくなったからです。

競合が下げれば追随してしまうし、注文が減るのが怖くて価格を上げられないという気持ち、よくわかります。

できることなら、値引き合戦から抜け出して、納得できる価格で選ばれたいですよね。

実は、価格の伝え方と問い合わせの入口を整えるだけで、価格以外の理由で選ばれる状態をつくれます。

選ばれる理由が価値になれば、安さだけで比較されることはなくなります。

そこで今回は、「薄利多売から脱却し、適正価格で利益を残す方法」をご紹介します。

薄利多売に限界を感じているなら、価格ではなく価値で選ばれる会社になりましょう。

目次

薄利多売は本当に時代遅れなのか

売上が安定しないグラフを見るビジネスマン

薄利多売という手法そのものが古いわけではありません。

ただし、成立する条件は以前より厳しくなっています。

プライシングを検討する際は、自社に当てはまるかどうかを冷静に見極めることが大切です。

薄利多売が成り立った時代背景

薄利多売は、市場が拡大し続けていた時代に有効だった手法です。

人口が増え、需要が右肩上がりで伸びる状況では、価格を下げて数量を稼ぐほど利益総額が積み上がったためです。

実際に高度経済成長期の小売業では、仕入れ量を増やして原価を下げ、その分を価格に反映して客数を伸ばす循環が成立していました。

自社の戦略が当時の前提のまま止まっていないか、一度振り返ってみてください。

現在の市場環境が大きく変化している

現在は、数量を追う戦略が機能しにくい環境に変わっています。

人口減少で市場全体が縮小し、原材料費や人件費が上昇したことで、値下げの原資を確保しにくくなったからです。

具体的には、仕入れ価格が上がっても販売価格を据え置けば、売れば売るほど利益が削られる状態に陥ります。

まずは直近数年のコスト推移を確認し、価格が現状に合っているか点検しましょう。

業種によって向き不向きがある

薄利多売が有効かどうかは、業種の構造によって分かれます。

大量仕入れや自動化でコストを下げられる業種と、人の手が価値になる業種では、数量を増やしたときの効果がまったく違うためです。

例として、コンサルティングや設計といった労働集約型の仕事では、受注が増えるほど対応時間が伸び、利益ではなく負担だけが積み上がります。

実際に筆者もWeb制作のコンサルを格安で請けてしまい、依頼が集中してしんどい思いをしました。

業種によって向き不向きがあるため、数量で勝負できる構造かどうか見極める必要があるでしょう。

価格競争だけでは利益を残しにくい

価格の安さだけを武器にすると、利益は手元に残りません。

競合が追随して値下げすれば優位性は消え、下げ続ける消耗戦に巻き込まれるからです。

仮に競合が同じ価格を出してきた場合、さらに安くする以外の選択肢がなくなり、体力のある企業だけが生き残る展開になります。

価格以外に選ばれる理由を1つでも作ることから始めましょう。

利益率を重視する企業が増えている

近年は、売上規模より利益率を優先する企業が増えています。

売上が伸びても手元資金が残らなければ、投資も人材確保もできないと気づく経営者が多くなったためです。

たとえば取引先を絞り込み、単価の高い案件に集中することで、売上を落としながら利益を伸ばした中小企業も少なくありません。

売上ではなく利益率を経営指標の中心に置き直してください。

薄利多売で起こりやすい問題

利益率をイメージしたパソコンと電卓

薄利多売を続けると、売上以外の部分にひずみが生まれます。

数字の上では順調に見えても、現場や資金繰りに負担が蓄積していくからです。

まずはどんな問題が起きやすいかを把握しましょう。

利益率が低く資金が残らない

薄利多売の最大の問題は、手元に資金が残らないことです。

1件あたりの利益が薄いため、売上が伸びても固定費を差し引くとほとんど何も残らない構造になっているからです。

具体的には、利益率5%の事業で1,000万円売り上げても粗利は50万円しかなく、人件費や家賃を払えば赤字に転じる場合もあります。

売上高ではなく、月次で残った現金を基準に判断してください。

問い合わせ件数だけが増えてしまう

価格を下げると、成約につながらない問い合わせが増えます。

安さに反応する層は比較検討が目的であることが多く、対応しても受注に至らないケースが目立つためです。

たとえば、1日に10件の問い合わせがあっても、そのうち8件が相見積もりの1社目に過ぎなければ、対応時間だけが失われます。

問い合わせ件数ではなく、成約率を追う指標に切り替えましょう。

価格だけで比較されやすくなる

安さを前面に出すほど、価格以外の判断軸が失われます。

顧客に対して「安いこと」を選定理由として提示している以上、より安い競合が現れれば乗り換えられるからです。

例として、同じ品質のサービスが2社あり、片方が1割安ければ、実績や対応力を見る前に価格で決着してしまいます。

自社が何で選ばれているのかを、顧客に直接聞いてみてください。

長時間労働につながりやすい

薄利多売は、働く時間の長さで利益を補う構造になりがちです。

1件あたりの利益が少ない分、目標額に届かせるには件数を増やすしかなく、その負担が人に集中するためです。

仮に月100万円の粗利が必要な事業で、1件の粗利が1万円なら100件こなす必要があり、残業や休日出勤が常態化します。

必要な件数と現実的な稼働時間を突き合わせて計算しましょう。

サービス品質を維持しにくい

販売件数を優先すると、品質は徐々に低下します。

1件にかけられる時間とコストが削られ、丁寧な対応や改善に手が回らなくなるからです。

具体的には、打ち合わせを短縮し確認工程を省いた結果、手戻りやクレームが増えて、かえって工数が膨らむこともあります。

実際に筆者が安請け合いしたときも、「安いから何も言わない」ということはなく、「安くても一定の質は求める」といったお客様が多かったです。

品質を守れる件数の上限を決め、それを超える受注は見直した方が良いでしょう。

適正価格で選ばれる会社になるための考え方

顧客にサービスの価値を伝えるビジネスマン

適正価格への移行は、値札を書き換えるだけでは実現しません。

誰に何を提供し、いくらで届けるかという前提から整える必要があります。

順を追って考え方を組み立てていきましょう。

価格ではなく価値を伝える

選ばれる理由を価格から価値へ移すことが出発点です。

顧客は本来、安さそのものではなく、支払った金額に見合う結果を求めているためです。

たとえば、「1件3万円」と伝えるより、「導入後に月20時間の作業削減が見込める」と伝えたほうが、金額の重さは相対的に軽くなります。

自社が顧客にもたらす成果を、数字や言葉で表現し直してください。

ターゲットを明確にする

適正価格で売るには、誰に売るかを絞る必要があります。

すべての顧客層に対応しようとすると、価格に敏感な層まで含まれ、結局は安さで勝負せざるを得なくなるからです。

例として、価格より納期を重視する法人だけに対象を絞れば、同じサービスでも高い単価が通りやすくなります。

自社の価値を正しく評価してくれる層を、まず言語化しましょう。

利益を確保できる価格を設定する

価格は、競合ではなく自社の必要利益から逆算します。

相場に合わせて決めると、コスト構造の違う他社の事情に自社の利益が左右されてしまうためです。

具体的には、固定費と目標利益を月間の対応可能件数で割れば、最低限確保すべき単価が算出できます。

まずは損益分岐点を計算し、そこから価格を組み立て直してください。

価格の根拠を説明できるようにする

価格には説明できる根拠が必要です。

根拠がないまま金額だけを提示すると、顧客は判断材料を持てず、他社との比較で価格だけを見るようになるからです。

仮に見積書に工程ごとの内訳と所要時間を明記すれば、金額の意味が伝わり、値引き交渉そのものが減っていきます。

自社の価格を分解し、何にいくらかかっているかを整理しましょう。

値引きを前提にしない仕組みを作る

値引き交渉が起きにくい仕組みをあらかじめ用意しておきます。

その場の判断で値引きに応じると、価格が交渉次第だと伝わり、以後の取引でも同じ要求が繰り返されるためです。

料金表を公開し、条件による加算ルールを明示しておけば、担当者ごとの裁量に頼らず一貫した価格を提示できます。

値引きの可否を個人判断に委ねず、社内の基準として決めてください。

価格競争を避けるための問い合わせ設計

価格競争を避ける問い合わせ設計をする人

価格競争は、問い合わせが届いた時点で始まっています。

どんな人がどんな情報を持って接触してくるかは、設計次第で変えられます。

価格競争を避けるためにも、入口の作り方から見直していきましょう。

料金の目安を事前に公開する

料金の目安は、問い合わせ前に開示しておくべきです。

金額が分からない状態では、価格を知るためだけの問い合わせが集まり、対応工数が無駄になるからです。

具体的には「基本料金30万円~」と幅を示しておけば、予算が合わない層は自然に離脱し、話が進む相手だけが残ります。

まずは最低価格帯だけでもサイト上に明記してください。

見積もり前に必要情報を取得する

見積もりを出す前に、判断材料を揃えておきます。

情報が不足したまま概算を出すと、後から条件が増えて金額が上がり、信頼を損なう結果になるためです。

たとえばフォームに予算帯、希望納期、想定規模の入力欄を設けるだけで、初回の提示精度は大きく上がります。

問い合わせフォームの項目を、判断に必要な内容へ絞り込みましょう。

見込み客を事前に絞り込む

見積もり依頼に対して、すべての問い合わせに対応する必要はありません。

自社の価格帯や得意分野と合わない相手に時間を使えば、本来注力すべき案件への対応が薄くなるからです。

例として、対応エリアや最低受注金額をあらかじめ明示しておけば、条件外の問い合わせは届かなくなります。

受けない条件を先に決め、サイト上ではっきり示してください。

FAQで価格に関する疑問を解消する

価格への疑問は、FAQで先回りして答えます。

「なぜこの金額なのか」が分からないまま問い合わせた顧客は、価格の妥当性より安さを基準に比較しがちなためです。

仮に「他社より高い理由」「追加費用が発生する条件」を明記しておけば、納得したうえで接触してくる相手が増えます。

過去に受けた価格の質問を洗い出し、FAQへ反映しましょう。

相見積もり目的の問い合わせを減らす

相見積もりの当て馬になる問い合わせは、意図的に減らせます。

比較材料として使われるだけの案件は成約率が低く、対応するほど利益効率が落ちるからです。

具体的には、提案書の作成に着手する前に有料の初期診断を挟むだけで、本気度の低い相手は離れていきます。

見積もりはタダじゃないため、無償で提供する範囲をどこまでにするか、線引きを決めてください。

WordPressで価格設定を伝えやすくする方法

パソコンの画面を見ながら電卓を操作する人

価格を伝える仕組みは自社サイト上で整えられます。

WordPressなら専門知識がなくても、必要な機能を段階的に追加できます。

ここからは、WordPressを使った価格設定について見ていきましょう。

自動見積もりフォームを導入する

自動見積もりフォームを導入することで、細かい見積もり依頼が減ります。

ユーザーが自分で金額を算出することができるため、わざわざ問い合わせる必要性がないためです。

たとえば、自動見積もりプラグイン「Fine Simulrator」なら自由に見積もり項目を作ることができ、その場で見積書PDFをダウンロードすることもできます。

自動見積もりフォームがあることで、見積書作成の手間を軽減できるでしょう。

サービス内容を明確に掲載する

サイト上にどんなサービス内容かを明確に記載してください。

何が含まれ何が含まれないかが曖昧だと、顧客は金額だけを他社と比べるためです。

例として、対応工程を一覧化し、含まれない作業も併記しておけば、単純な価格比較は成立しなくなります。

自社のサービス範囲を、含む・含まないの2軸で整理してください。

料金表を更新しやすく管理する

料金表は、すぐ書き換えられる状態にしておきます。

更新に手間がかかると価格改定が後回しになり、コスト上昇分を吸収したまま利益が削られていくからです。

例として、美容室向けテーマ「Liora」にはメニュー設定機能が実装されているため、管理画面から数字を直すだけで反映します。

料金改定にかかる作業時間を測り、負担が大きければテーマを見直しましょう。

問い合わせまでの導線を最適化する

サイト内でトップページから問い合わせまでの導線を設定してください。

金額に納得した瞬間が最も行動しやすく、そこで動線が途切れると熱量は下がってしまうためです。

たとえば、料金ページの直下に問い合わせフォームを配置すれば、別ページへ移動する手間なく連絡できます。

各ページの離脱箇所を確認し、導線が切れていないか点検しましょう。

利益を残す価格戦略へ転換する方法

売上が良くてガッツポーズする、飲食店のオーナー

価格戦略の転換は、一度の値上げで終わる作業ではありません。

自社の強みを定め、継続的に数字を見直す取り組みが必要です。

安さではなく専門性を強みにする

薄利多売を避けるためには、競争軸を価格から専門性へ移します。

安さは誰にでも真似できますが、特定分野の知識や実績は短期間で追いつかれないからです。

具体的には、対応業種を1つに絞って事例を蓄積すれば、その分野では価格を比較されにくい存在になります。

自社が最も成果を出せる領域を1つ選び、そこに資源を集中してください。

利益率を定期的に見直す

利益を残すためには、利益率を定期的に見直す必要があります。

原価も人件費も変動するため、設定時に適正だった価格が数年後も適正とは限らないからです。

半年に一度、案件ごとの実績原価と請求額を突き合わせれば、赤字案件を早い段階で発見できます。

利益率を定期的に見直すために、あらかじめ年間予定に組み込みましょう。

価格と業務負担のバランスを考える

価格は、現場の負担とセットで判断します。

金額だけを見て受注すると、対応工数が想定を超え、単価が高くても利益が残らない事態が起きるためです。

仮に売上100万円の案件でも、想定の倍の工数がかかれば、50万円の案件より利益率は下がります。

案件ごとの実作業時間を記録し、単価と照らし合わせてください。

リピーターを増やして利益を安定させる

既存顧客からの継続受注が、利益を安定させます。

新規獲得には広告費や提案工数がかかる一方、リピートはその負担なしで売上が積み上がるからです。

例として、年に数回発注してくれる取引先が10社あれば、新規開拓に追われず価格を守った経営ができます。

既存顧客との接点を増やし、次の相談先として想起される状態を作りましょう。

継続的に価格戦略を改善する

価格戦略は一度作ったら終わりではありません。

市場環境も競合状況も変わり続けるため、当初の前提が成立しなくなる時期が必ず来るからです。

具体的には、成約率と利益率を毎月記録しておけば、価格が高すぎるのか安すぎるのかを数字で判断できます。

小さく試して結果を測る流れを、日常の業務に組み込んでください。

まとめ

薄利多売という手法そのものが古いわけではなく、市場環境が変わったことで成立する条件が厳しくなっただけです。

数量を追えば利益率は下がり、問い合わせ件数だけが増え、長時間労働とサービス品質の低下を招きます。

薄利多売を抜け出す鍵は、価格ではなく価値を伝えることです。

ターゲットを絞り、利益を確保できる価格を根拠とともに提示すれば、値引きを前提にしない取引が実現します。

料金の目安を事前に公開し、FAQで疑問を解消しておけば、相見積もり目的の問い合わせも自然に減っていきます。

WordPressの自動見積もりフォームや料金シミュレーションは、その仕組みづくりを後押ししてくれます。

安さではなく専門性を強みに、利益率を定期的に見直しながら、リピーターとともに利益が残る経営へ踏み出しましょう。